3月の花だより その5

玉川上水で見られる野草、山野草、雑草、樹木、花をご紹介!

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3月はたくさんの花が咲きすぎて、ついに「その5」です。
今回は少しだけ。


フデリンドウ(筆竜胆)の花
ついに開花しました!2、3ヶ月前からずっと見守ってきた花だったので、感慨深い...
とりあえずこのひと株だけの開花でした。
例外的に早く咲いたのか、これから順番に開花していくのか、どうなんでしょうね。



カラスノエンドウ(烏野豌豆)の花
どこでも見かける春の雑草。ヤハズエンドウとも。花を見ると分かるようにマメ科。
以前、玉川上水周辺で見かけたのですが、今回は水路脇でも発見したため再掲載。


イヌシデ(犬四手)の芽吹き
若々しい新芽。毛が多くて、ふかふかしています。


ヒトリシズカ(一人静)の新芽
素朴で清楚な花が大好きな春の野草です。ついに今年も芽が出てきました。
ヒトリシズカとフタリシズカ」の記事内に、花が咲いている時期の写真、地上部が枯れる直前の写真を掲載しています。


シラカンバ(白樺)の花
「シラカバ」という言い方のほうがおなじみ。
玉川上水のような場所には普通、自然に生えることはない木ですが、玉川上水駅付近に一本あります。
いろいろと事情があって、かなり前に植えたものとのこと。


暖かい雨の後、日が出てきた午後。
水路がキラキラと輝いていました。

狭山茶はどこのお茶?

私は日本茶アドバイザー&日本茶検定1級の資格を持っており、日本茶の楽しみ方を伝えていくことも使命のひとつです!

さて、今回は玉川上水沿いの村とも関係のある、「狭山茶」の話題。

狭山茶と聞くと、埼玉県を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

たしかに、主な生産地は埼玉県内の入間市、所沢市や狭山市ですが、瑞穂町や東村山市内でも生産されています。(東京都内のものは「東京狭山茶」といわれる場合が多い。)

また、明治期に玉川上水沿いの砂川村(立川市)、小川村(小平市)でもお茶を栽培していて、狭山茶として出荷していたことが分かっています。
砂川はいわゆる狭山茶の本場ではないが、その生産地の一部ではある。
「砂川の歴史」より


そもそも「狭山」とはどこを指しているのでしょうか?

もともとは狭山丘陵自体を狭山と呼んでいた可能性もあるようです。
現在、「狭山」は完全に地名化していて、「狭山」の付く地名が狭山丘陵周辺に散らばっています。
面白いのは所沢市にある「狭山不動尊」の山号。これが「狭山山(さやまさん)」なのです。*1


小平に店舗を構える鈴木園さんの、「玉川上水」と名付けられたお茶も狭山茶です。
玉川上水と狭山茶は意外とつながりがあるため、納得!





お茶好きの私は、毎年狭山の新茶イベントに行っています!

新茶イベントの定番は、
・茶摘み体験
・お茶販売、お茶加工品の販売
・手揉み茶の実演
となっています。その他、淹れ方講座やお茶席なども、そのイベント次第で。

摘んだお茶の葉は、自宅で製茶(電子レンジやホットプレートを利用)したり、天ぷらにして食べたりできます。これがとてもおいしい!

お茶に関して、特別な興味や知識がなくても十分に楽しめるイベントなので、おすすめです。
「新茶 イベント」等で検索すればきっと情報が見つかることでしょう。



ちなみに!
「茶畑の野鳥」といえば、キジとホオジロです。
わざわざ茶畑にバードウォッチングに出かける人は少ないと思うので、あまり知られていないことなのかも。

畑地の多かった昔は、比較的どこでも見られる野鳥だったキジ。茶畑ばかりのお茶どころでは今もうろうろしていて、どこからともなく「ケーン、ケーン」と聞こえてきます。

そして、お茶の葉のとれるチャノキはツバキの仲間。常緑樹です。
これがホオジロにとっては都合のいい藪となっていて、あちこちから「チチチ...」と聞こえてきます。
八十八夜の頃には繁殖期であり、電線に止まって「一筆啓上仕り候!」とさえずっている姿もよく見られます。


*1 どんなお寺にも「山号」と「寺号」があります。落語の「山号寺号」でおなじみ。 浅草の観音様は金龍山浅草寺。成田山新勝寺。東叡山寛永寺。三縁山増上寺。狭山のうしろにさらに山が付いて、「狭山山(さやまさん)」となってしまうことからも、「狭山」が山の名前ではなく完全に地名化していることが分かります。

3月の花だより その4

玉川上水で見られる野草、山野草、雑草、樹木、花をご紹介!

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コブシ(辛夷)の花
玉川上水周辺も含め、あちこちで開花しています。開花具合は大雑把に50%くらいの印象。
面白いのは花の付け根。ここに小さな葉が一枚つくんですね。かわいらしい。


コナラ(小楢)の冬芽
成長中!黄緑色の部分が見えています。



オオアラセイトウ(大紫羅欄花)の花
見るたびに増えています。にぎやかになりました。

 
マユミ(真弓)の新芽とつぼみ
葉の付け根に小さなつぼみが見えます。開花は5月頃だったはず。


ヤマブキ(山吹)の花
開花しました。まだ開いている花は少なめ。


ウグイスカグラ(鶯神楽)の花と葉
葉の成長具合を記録。


フデリンドウ(筆竜胆)のつぼみ
いつ花が咲くか、ずっと楽しみにしています。ただ、昨年フデリンドウの花を見かけたのは4月中旬だったので、まだまだ先なのかも。


(たぶん)ソメイヨシノ(染井吉野)のつぼみ
識別に自信がないものの、今のタイミングでこの状態なのを考えるとソメイヨシノではないかと。開花予想は3月21日(月)頃!


アマナ(甘菜)の花
早い時期に咲く、清楚な春の野草!
今日は快晴だったため、しっかり花が開く姿を見ることができました。
雑木林エリアよりは、もうちょっと木の密度が少なく明るいエリアで、たくさん咲いています。

 
早咲き品種の桜は見頃、もしくは見頃過ぎ。


アオキ(青木)のつぼみ
ここまでつぼみが成長している個体はまだ少なめ。
もうしばらくすると、小さく地味な花が咲きます。


ユキヤナギ(雪柳)の花
数は多くありませんが、玉川上水でも見かけます。
植物に積もる雪のように、小さく白い花がいっぱい咲きます。


フキ(蕗)の花
つぼみの状態が、フキノトウとしておなじみの植物。
こちらの花は雌花に見えます。


ムスカリの花
名前から分かるように、国外産。春にかわいらしい花が咲きます。
家庭での園芸用に人気があって、まわりの民家から広がっていったものだと思っています。



タチツボスミレ(立坪菫)の花
あちこちで咲きはじめました。どこでもよく見られるスミレ。
これ以外の種類のスミレも咲くかどうか、要チェック。
花の後ろ側へ広がっている部分は距(きょ)と呼ばれます。スミレの仲間は花の形が独特。


レンギョウ(連翹)の花
雑木林の中にまぎれるような樹木ではありませんが、玉川上水でも場所によっては見かけます。


ミズキ(水木)の冬芽
真っ赤な冬芽から、緑色の新芽が見えてきました。


ツタバウンラン(蔦葉海蘭)の花
見た瞬間にムラサキサギゴケだと思ったのですが、よく見ると微妙に違う。
調べてみたらツタバウンランでした。ヨーロッパ原産の帰化種。


カタバミもしくはカタバミの近縁種の花。


菜の花。「菜の花」と言われている植物は複数あります。
識別はやや難しい。

江戸東京たてもの園 特別展「小金井の桜 ー春の江戸東京名所めぐりー」

江戸時代から桜の名所として知られた「小金井桜」とは、いうまでもなく玉川上水の桜のことです

小金井桜については以前、玉川上水と小金井の桜の記事で詳しく書きました。

今回、江戸東京たてもの園で開催された、特別展「小金井の桜 ー春の江戸東京名所めぐりー」では、小金井を中心とした江戸東京の桜の名所に関係のある錦絵や資料、道具が数多く展示されていました。

会期は2016年3月8日(火) ~ 5月8日(日)。(期間中、展示替え有り。)

(撮影 2015年3月31日 小金井公園内 江戸東京たてもの園前)
2ヶ月たっぷりの会期。
3月末〜4月初旬ならば、ソメイヨシノを楽しみながら、展示も楽しめます。


今回の展示を見て、いくつか発見がありました。
まずは「武蔵野小金井桜順道絵図」に書かれていた「玉川御上水」の表記。
江戸の御城にも給水していた玉川上水ですから、「御上水」と呼ぶことがあっても何もおかしくありません。
以前「玉川上水は何と呼ばれていたか」という記事を書いたけれど、その頃にはこの表記を見つけることができていませんでした。
「御上水」で調べて行ったらまた新しく分かることがあるかも!

もう一つの発見。遊園地として有名な「浅草花やしき」はもともと本当に植物園の意味での「花屋敷」だったとのこと。桜の名所でもあったようです。
一応、江戸文化歴史検定2級の資格を持っている私ですが、初めて知りました(勉強不足...)。有名な話でしょうか。

錦絵に関しては、復刻版の展示も多めでしたが、くっきりと見やすい色味でした。
浮世絵(というより錦絵)は、江戸時代に刷られた「本物」をありがたがるようなものではないと個人的には思っています。もちろん本物の魅力・価値はありますが。
絵から何か情報を読み取ろうとする時には、発色の良い複製や復刻版のほうが、分かりやすい部分もあるのではないかと。


さて、小金井桜について知りたい場合、こちらの冊子がおすすめです。

「名勝小金井 桜絵巻」
名勝小金井(サクラ)の江戸時代から現代までの歴史を、錦絵・紀行文・古写真・絵葉書等の資料で紹介した冊子。
1部700円です。小金井桜に関する錦絵や昭和30年代の写真が充実しています。

市の出版物のため、一般書店では購入できません
また、今回の展示の図録というわけでもないので、江戸東京たてもの園でも取り扱っていません。
小金井市役所 生涯学習課と小金井市 小金井市文化財センター(浴恩館)で購入できます。


何かがおかしい、現在の小金井市内 玉川上水。
写真右側=水路側にずらーっと並んでいるケヤキは、水路の底に近い斜面から伸びているのです。

江戸時代の浮世絵はもちろん、昭和30年代の写真を見ても、堤はしっかりと下草刈りが行き届いているようで、桜並木以外の樹木はほぼ見当たりません。
「名勝小金井 桜絵巻」 によると、
しかし、昭和四六年頃、小平監視所より下流の玉川上水の通水が停止してからは、次第に水路の荒廃が進み、ケヤキを中心とする高木が旺盛に繁茂し、わずか二〇年ほどで雑然とした雑木林に変わってしまいました。
とのこと。
桜の生育にも影響があるため、伐採も進んでいるケヤキを中心とした高木。

雑木林を優先すべきか、桜を優先すべきか、どちらにとっても都合の良い妥協点があるのか、考えることは良い勉強になりそうです。

大事なのは「ケヤキは伐採すべき!」「ケヤキは伐採すべきではない!」と極端にならないことだと思っています。
雑木林的な環境を最優先するとしても、ある程度間伐すべきケヤキがあると思いますし、桜を最優先するとしても今の緑道を乾燥や排気ガスから守るためには桜以外の樹木をある程度残す必要があるでしょう。

残念な話ではあるけれど、「車道に挟まれ交通量が多い状態は変えられないが昔のような雰囲気の桜並木を復活させたい!」というのはやはり今となっては難しいのだと思います。