江戸東京たてもの園 特別展「小金井の桜 ー春の江戸東京名所めぐりー」

江戸時代から桜の名所として知られた「小金井桜」とは、いうまでもなく玉川上水の桜のことです

小金井桜については以前、玉川上水と小金井の桜の記事で詳しく書きました。

今回、江戸東京たてもの園で開催された、特別展「小金井の桜 ー春の江戸東京名所めぐりー」では、小金井を中心とした江戸東京の桜の名所に関係のある錦絵や資料、道具が数多く展示されていました。

会期は2016年3月8日(火) ~ 5月8日(日)。(期間中、展示替え有り。)

(撮影 2015年3月31日 小金井公園内 江戸東京たてもの園前)
2ヶ月たっぷりの会期。
3月末〜4月初旬ならば、ソメイヨシノを楽しみながら、展示も楽しめます。


今回の展示を見て、いくつか発見がありました。
まずは「武蔵野小金井桜順道絵図」に書かれていた「玉川御上水」の表記。
江戸の御城にも給水していた玉川上水ですから、「御上水」と呼ぶことがあっても何もおかしくありません。
以前「玉川上水は何と呼ばれていたか」という記事を書いたけれど、その頃にはこの表記を見つけることができていませんでした。
「御上水」で調べて行ったらまた新しく分かることがあるかも!

もう一つの発見。遊園地として有名な「浅草花やしき」はもともと本当に植物園の意味での「花屋敷」だったとのこと。桜の名所でもあったようです。
一応、江戸文化歴史検定2級の資格を持っている私ですが、初めて知りました(勉強不足...)。有名な話でしょうか。

錦絵に関しては、復刻版の展示も多めでしたが、くっきりと見やすい色味でした。
浮世絵(というより錦絵)は、江戸時代に刷られた「本物」をありがたがるようなものではないと個人的には思っています。もちろん本物の魅力・価値はありますが。
絵から何か情報を読み取ろうとする時には、発色の良い複製や復刻版のほうが、分かりやすい部分もあるのではないかと。


さて、小金井桜について知りたい場合、こちらの冊子がおすすめです。

「名勝小金井 桜絵巻」
名勝小金井(サクラ)の江戸時代から現代までの歴史を、錦絵・紀行文・古写真・絵葉書等の資料で紹介した冊子。
1部700円です。小金井桜に関する錦絵や昭和30年代の写真が充実しています。

市の出版物のため、一般書店では購入できません
また、今回の展示の図録というわけでもないので、江戸東京たてもの園でも取り扱っていません。
小金井市役所 生涯学習課と小金井市 小金井市文化財センター(浴恩館)で購入できます。


何かがおかしい、現在の小金井市内 玉川上水。
写真右側=水路側にずらーっと並んでいるケヤキは、水路の底に近い斜面から伸びているのです。

江戸時代の浮世絵はもちろん、昭和30年代の写真を見ても、堤はしっかりと下草刈りが行き届いているようで、桜並木以外の樹木はほぼ見当たりません。
「名勝小金井 桜絵巻」 によると、
しかし、昭和四六年頃、小平監視所より下流の玉川上水の通水が停止してからは、次第に水路の荒廃が進み、ケヤキを中心とする高木が旺盛に繁茂し、わずか二〇年ほどで雑然とした雑木林に変わってしまいました。
とのこと。
桜の生育にも影響があるため、伐採も進んでいるケヤキを中心とした高木。

雑木林を優先すべきか、桜を優先すべきか、どちらにとっても都合の良い妥協点があるのか、考えることは良い勉強になりそうです。

大事なのは「ケヤキは伐採すべき!」「ケヤキは伐採すべきではない!」と極端にならないことだと思っています。
雑木林的な環境を最優先するとしても、ある程度間伐すべきケヤキがあると思いますし、桜を最優先するとしても今の緑道を乾燥や排気ガスから守るためには桜以外の樹木をある程度残す必要があるでしょう。

残念な話ではあるけれど、「車道に挟まれ交通量が多い状態は変えられないが昔のような雰囲気の桜並木を復活させたい!」というのはやはり今となっては難しいのだと思います。