新宿の高層ビルと玉川上水の関係は


紅葉が舞い散る玉川上水。美しい景色が見られる時期になりました。

さてさて、珍しく西新宿へ出かける機会がありました。
高層ビルが立ち並び、都庁も置かれる副都心。

ある意味では新宿の顔とも言えるのかもしれませんが、なかなか出向く用事もなく。

「新都心」という言葉もあるように、ここが高層ビル群へ変わったのは比較的新しい時期です。


このあたりにあったのが淀橋浄水場。
東京水道発祥の地であったことの証として、蝶型弁が今でも設置されています。

近代水道のはじまり
ドラマでもよく描かれるように、幕末にはコレラが流行し、大問題になりました

衛生面で、どう考えても限界のあった玉川上水。
もちろん、現代の常識から考えると、(多摩川から引き入れた)川の水を飲み水にすることにそもそも無理はあります。
しかし、それとは別に多くの問題があったことも確か。
自殺が多かったことは大問題。
さらに、子供が水路に入って遊ぶ
そして、明治期に2年ほど通船を行ったことでさらに水質が悪化しました。

明治維新後、近代化、近代化と騒いでいた時期。
浄水場もまた、日本の近代化のためにどうしても必要なものだったことでしょう。


本来の玉川上水は、四谷のあたり。
現在の西新宿の位置に作った淀橋浄水場へ玉川上水の水を引き入れるために、代田橋駅付近から、北東へ伸びる新水路が作られました。

西新宿を歩いていて、妙な高低差を感じられたらそれは浄水場の影響です。


(十二社)熊野神社。

エコギャラリー新宿。

淀橋浄水場の工事などで、ほとんどは埋め立てられましたが、このあたり(十二社)は多くの滝が存在した景勝地。
それを意識したのかは分かりませんが、新宿中央公園には滝が。


太田道灌と関係のある猫。

カワセミ

渓流・清流の宝石と呼ばれることも多い、このカワセミ。
玉川上水でも時々見られます。

さて、間違い探し。

カワセミの雌雄は案外簡単に見分けられます。
上の写真ではくちばしの下半分が橙色。こちらがメス。
下の写真ではくちばし全部が黒くなっています。こちらがオスです。

メスは、口紅を引いているというイメージを連想すると覚えやすいのかも。


高度経済成長期の水質汚染により、都市部ではほとんど見られなくなった時期もあったといいます。
その後、多くの対策によりまた姿を見せるようになったこともあり、「きれいな川にしか住まない」というイメージが持たれていることもあります。
しかし、意外とそうでもないというのが個人的な見解です。

カワセミたちが現代の環境に合わせて適応していったという可能性もありますが、人の目にはあまりきれいだとは思えない水場でも姿を見かけます
重要なのは、エサとなる魚が住んでいるかどうかというポイントなのかもしれません。


玉川上水の水路には、肉眼では見づらいものの、たしかに小魚が生息しています。
のそのそと水路を歩くサギ類(コサギ、アオサギなど)を観察していると、パクッと小魚を捕らえるところを見ることができます。


さて、親戚(カワセミ科)には、山地でしかなかなか見られないヤマセミアカショウビンがいます。
いずれも人気の野鳥。

そのほか、日本には生息していないワライカワセミという鳥もいます。

名前の通り、人の笑い声にそっくりで衝撃的な鳴き声。びっくりします。
大きさは40cm以上あり、本家カワセミの倍以上
サイズは違っても、どう見たってカワセミの仲間であることは分かる姿をしているのがおもしろい!

玉川上水の野鳥


 春にはウグイス、夏にはカッコウの歌声が響く玉川上水の雑木林。ゴールデンウィーク 頃にはキビタキ、オオルリ、サンコウチョウといった夏鳥が立ち寄ることもあります。 長く続く緑道はキツツキたちにとっても住みやすい環境。毎日見られるコゲラのほか、アオゲラ、アカゲラの姿も時々見かけます。小平監視所より下流に見られる舗装されていない土の壁面は、渓流の宝石と呼ばれる美しい野鳥、カワセミが営巣できる環境にもなっています。 多くの野鳥の繁殖も毎年確認されている玉川上水。住宅地に囲まれていながらも、野鳥たちの楽園のような場所です。

 さて、玉川上水には非常に多くの野鳥が生息しています。一時的に立ち寄る種も含めると、50〜60種、もしかしたらそれ以上の種を見つけられるのではないでしょうか。私自身も40種程度は実際に見て確認しています。

玉川上水野鳥カレンダー

その中のいくつか、基本的な種類を紹介します。


ヒヨドリ(鵯)
いつでもどこでも見かけます。
鳴き声をやかましく感じる方もいるかもしれません。
食への執念はなかなかのもの。くちばし周りが花粉だらけになっている姿も見かけます。


ムクドリ(椋鳥)
近頃は都市部で増えすぎて、害鳥扱いされることも。
玉川上水では特に春〜夏によく見かけます。緑道をトコトコと歩いていることも。
のんきなところもありますが、人が一定以上近づけばきっちり逃げます。
鳴き声のバリエーションが豊富で聞いていて楽しい野鳥です。


コゲラ(小啄木鳥)
小平市の市の鳥でもある小型のキツツキ。


アオサギ(蒼鷺)の若鳥
水路をゆったりと歩き、時々小魚を捕まえています。
かなりの大きさでありながら、水路にいても通行人に気が付かれないことも多い、不思議な存在感の野鳥です。


キジバト(雉鳩)
ポッポポッポポーと3拍子リズムの鳴き声でおなじみのハト。



メジロ(目白)
とにかく小さくて、ちょこまかと動きまわる姿が可愛らしいメジロ。
花の色と美しいコントラストをつくる緑色。
一年中いますが、花の多い春が見つけやすいかも。


シジュウカラ(四十雀)の子供
ツーツーピー、ツーツーピー、とよく通る鳴き声が林から聞こえてきます。
この写真はまだ子供なのでくちばしが黄色く、全体的にまるっこい姿をしています。
子供をよく見かけるので、玉川上水で繁殖しているのでしょうね。


ヤマガラ(山雀)
シジュウカラの親戚。エゴノキの実をとって足につかみ、食べている姿をよく見かけます。
鳴き声が和音であることにも驚きます。


カワセミ(翡翠)
渓流の宝石。
出会えたらラッキー!といいつつ、場所・時間によっては意外なほどよく見かけるのがカワセミ。



雪の日のカワセミ(翡翠)
玉川上水ではこんな幻想的な光景が見られることもあります。



シロハラ(白腹)
冬にときどき見かけます。
漢字表記があまりにもストレート...。


ツミ(雀鷹)
ハト程度の大きさですが、立派な猛禽類。
まれにオオタカも見られますが、玉川上水でおなじみのタカといえば、このツミ。

木の実と野鳥

 エゴノキの実はヤマガラの大好物。器用に両足で種子をつかみ、くちばしで突いて中身を食べる姿がよく見られます。

 玉川上水には多くの実をつけるエノキムクノキの成木が多く、アトリ科の野鳥を中心に多くの鳥たちのエサとなっています。他にもナンテン、マサキにネズミモチ、ヤマグワなど野鳥の好む木の実がたくさんあります。季節ごとに、鳥たちに一番人気の木の実を探すことも楽しみのひとつです。

エノキの実を食べるイカル


ケヤキによく集まっていたアトリ

玉川上水の冬鳥

  玉川上水の冬。イカル、シメのようなアトリ科、ジョウビタキ、ツグミ、シロハラ、カシラダカにトラツグミなど、たくさんの冬鳥が飛来し、野鳥観察が最も楽しくなる時期です。

ジョウビタキのオス

 また、コゲラ、エナガ、シジュウカラといったお馴染みの面々も、葉がすっかり落ちた冬の林ではかなり観察しやすくなります。

 水路にはマガモがやってくるほかに、カルガモの数もかなり増え、四十羽以上が同時に見られたこともあります。人が手を出しにくい玉川上水の水路は、カモたちにとって過ごしやすい環境のようです。
 春が近くなると、ツグミやジョウビタキのさえずりの練習(ぐぜり鳴き)が聞けることも。


冬の玉川上水上流部でよく見つかるマガモ

外来種の鳥

 多くはないものの、何種か外来種の鳥を見かけます。玉川上水に定住しているわけではなく、林を散策していると時々見かける、という場合がほとんどです。

ホンセイインコはかなりの存在感
 大きなケヤキをねぐらにすることが多く、玉川上水の林よりは街道沿いの屋敷林を好んでいるようで、毎日見かけるようなことはありません。数羽が上空を通過していくのをよく見かけます。例外は井の頭公園内で、住み心地が良いのか完全に定着しています。


大きな声で囀るガビチョウ
 ウグイスの生息するやや山寄りの林には結構な確率で定着しているガビチョウ。美しい声と言えなくはないのですが、日本の野鳥と比べて少しやかましい声を嫌う人もいます。玉川上水を散策していると時々声が聞こえてくることはあり、また、林内で目撃することもあるのですが、数が増えるような気配は感じません。

砂川分水予習

玉川上水分水のひとつ、砂川分水(砂川用水/砂川村分水)。

その分水口は松中橋のすぐそばに。

  (撮影 2015年10月)


  (撮影 2015年11月)
柴崎分水口のすぐ隣にあります。左が砂川分水。右が柴崎分水。

本来の砂川分水は、取り入れ口も現在の場所とは異なり、砂川村で利用するためのものでした。
明治期になると通船がはじまった都合もあり、多くの分水口を統合することに。
その際に南側11ヶ所の分水口をひとつにまとめたのが砂川分水口

玉川上水から直接取り入れていた分水口が使えなくなったことで、各村が好き勝手に水量をコントロールすることはできなくなったわけですね。

北側では新堀用水がその役割を担いました。

入り口がまとまった分水の先は深大寺村までのびたため、明治以降の砂川分水は深大寺用水とも呼ばれるようになりました。
下流の深大寺に近い部分を深大寺用水と呼んだ、という考え方もできるのかもしれません。

さて、この分水は小平監視所より上流で取り入れているため、基本的には多摩川の原水が流れていることになります。
その水は現在どこまで続いているのか...?
実踏調査が楽しみです。