おすすめ本|昆虫好きの生態観察図鑑I チョウ・ガ

昆虫好きの生態観察図鑑I チョウ・ガ
昆虫好きの生態観察図鑑I チョウ・ガ


以前から欲しかったこの本をようやく手にすることができました。
図鑑としてはやや癖があります。

・同定用の専門的な図鑑としてはおすすめできない

内容は、蝶と蛾の生態写真に簡単な解説が添えられたもの。
似た種との見分け方などは特別記載されていません。

かなり多くの種類が掲載されていますが、この本を頼りに見つけた蝶・蛾の種類を確実に同定するのはやや難しいかもしれません。

また、生態写真のみで構成されているのは魅力的ですが、種ごとの掘り下げは控えめ。
ほんの何種類かは数ページに渡っての解説がありますが、ツマグロヒョウモンやアカボシゴマダラといった、昔からの在来種とは言えない種がなぜか特に掘り下げられていたりします。

個人的には好きですが、在来ゴマダラチョウへの影響が懸念されているアカボシゴマダラの写真を、成虫・幼虫ともに表紙へ掲載する意図もよくわかりません。

・蛾が好きな人におすすめの一冊!

それでも、以前から欲しかった理由があります。
珍しく、かなり多くの蛾の生態写真が掲載されていることです。

もちろん、蛾の種類数は蝶とは比べ物にならないほど多いため、かなり多くの蛾が掲載されているといっても、身近な場所でこの本に掲載されていない種が見つかることもあるでしょう。

ただ、「チョウ・ガの図鑑」といった場合、蛾の掲載数が少ないものが多く、昆虫全般を掲載した図鑑でも、蛾の掲載量は少ないことがほとんど。

いきいきとした蛾がたっぷり掲載されているこの図鑑は、見ているだけで楽しい!
図鑑というよりは、写真集のような楽しみ方に近いかもしれません。

おすすめ本|シーボルト 日本植物誌(ちくま学芸文庫)


シーボルト 日本植物誌 (ちくま学芸文庫)
シーボルト 日本植物誌 (ちくま学芸文庫)

江戸文化、植物学、美術、すべてにおいて興味深い一冊!
世界ではじめての、日本植物の本格的な彩色画集。

医者としてのイメージ(蘭学)が強いと思われるシーボルトですが、植物への関心が強い学者さんでもありました

日本滞在中に、たくさんの植物を採集、研究し、まとめたものが日本植物誌。

例えば玉川上水にもかなり多いエゴノキも登場しています。
この本での和名はTsisjano-ki=チシャノキ。
現在でもエゴノキをチシャノキと呼ぶことはありますし、エゴヒゲナガゾウムシ(特に幼虫)のことをチシャムシと言ったりします。

この本に収録されているエゴノキの図版を見ると、エゴノネコアシフシ(虫こぶ)が描かれています。
虫こぶと分かって描いたのか、分からなかったから描いたのか不明ですが、とても興味深い!

和歌や美術品から、「大昔にも今と変わらない動植物が同じように存在していたことを実感する」っていうことがとても好きです。(厳密には淘汰や遺伝子撹乱によって変わっていたりしますが...)
この「日本植物誌」は江戸後期、時代的には比較的新しいのですが、図版が植物学的にもかなり正確なものなので、やはりその実感が段違いなのです。

著作権の都合で、ここにその図版を貼るようなことはできませんが、京都大学電子図書館などによりweb上でも閲覧できます。

エゴノキの図版はこちら



おすすめ本|私たちにたいせつな生物多様性のはなし

私たちにたいせつな生物多様性のはなし 
 私たちにたいせつな生物多様性のはなし


「生物多様性」の基礎的な知識をバランスよく学べる一冊でした。

専門家による興味深い独自の視点で書かれた文章という感じではないのですが、現状をさらっと学ぶのには分かりやすい本だと思います。

特に、マクロな視点での「生物多様性」、そして暮らしとのつながりについて、ほどよく掘り下げられていました。
それがいい!

身近な自然の生物多様性を保つために具体的にどんな管理を行っていくべきか、そういった生態学的な視点ばかりで学んでいると、気付けないことがたくさんあります

最近良く話題になる「生態系サービス」についての概要、国内・国外の現状の基本的な部分などもかなり易しく解説しています。

個人的に重要だと思うのは、「ビジネスと生物多様性のつながり」というパートです。
"お金の流れを変えることで生態系が守られる"なんていう記事もあり。

その全てがうまく機能しているとは限りませんが、主にイメージアップのために環境保全事業に取り組んでいる大企業は多く、それらは「地域のボランティア」の活動では決して実現できないことを成功させている場合もあります

「自然のために…」という考えよりは、環境保全を積極的に行うことが企業にとっても具体的なメリットがあるような流れができることがやはり理想でしょうか。

ただ、環境問題には胡散臭い部分もたくさんあります。
こういった本を一冊だけ読んで感化されず、色々な視点の考えを知り、自分でも考えていくことがなにより大切かと思います。

おすすめ本|日本の野鳥(山溪ハンディ図鑑)


新版 日本の野鳥 (山溪ハンディ図鑑)

新版 日本の野鳥 (山溪ハンディ図鑑)

日本の野鳥図鑑の決定版
野鳥図鑑でいいものはないか?と聞かれたらこの図鑑をおすすめします。


いいところ:
何より気に入っているのは、分布、観察時期の他、食性もほぼ全種について書かれていることです。
写真+ちょっとした解説のある図鑑はたくさんありますが、例えば「何を食べるのか」を書いていたり書いていなかったり種類ごとにバラバラなことが多いのです。

また、分布についても国内地図ではなく世界地図。
渡り鳥が日本で見られない期間にはどこにいるのか、そして国外でも同様に見られる種類なのか。最近はこれが気になることが多いのでうれしい情報です。

微妙な違いの亜種や幼鳥など、この図鑑だけでは判断しきれないものもあるかもしれませんが、普通の図鑑よりはずいぶん掲載写真の数は多くなっています。
そして、掲載写真のほとんどが顔を左に向けた鮮明な写真!比較がしやすくなっています。


悪いところ:
サイズが大きく重たい。持ち運びできるサイズにはなっているのですが、普段からリュックに入れるのには不便。家で読むのにはちょうどいいと思います。

掲載種が多すぎるので、初心者向きではない。最初の一冊としてはもっとシンプルな本をおすすめします。(基本がわかる野鳥eco図鑑など。)


その他:
どんな環境で野鳥観察をするかによって、必要な図鑑はかなり変わってくると思うのですが、個人的には鳥のポケット図鑑の必要性を感じたことがほとんどありません。
野鳥初心者の頃は、その場で図鑑を見てもなかなか分からないでしょうし、野鳥観察に慣れてき頃には、知らない種に出会う頻度はずいぶん低くなります。

最初は基本がわかる野鳥eco図鑑のようにひたすら写真が羅列してあるタイプではない本を買って、慣れてきたらこの「日本の野鳥」を自宅用に購入、そして同定の難しい「カモメ」や「シギ・チドリ」に限り持ち運び用のハンドブックを買うような順序をおすすめします!