玉川上水の蝶

玉川上水の蝶まとめ。
自然度が高い場所に生息するような蝶は残念ながらあまり見られないのですが、典型的な「雑木林で見られる蝶」が数多く生息しています。
明るい水路となっている羽村・福生では見られる蝶に違いがあります。
主に、立川市内、小平市内の雑木林で調査をしてますが、どちらかの場所でしか見られない蝶というのは今のところ見つかっていません。これもいつかじっくり調査したい。

タテハチョウの仲間

  

ゴマダラチョウ
雑木林の代表的な蝶(だと思っています)。
写真1枚目は春型(白色部分が多い)、2枚目は夏型。
成虫は樹液食。幼虫はエノキを食草とする。

生態は国蝶オオムラサキと共通点が多い。玉川上水ではオオムラサキは見られない。(かなり昔に羽村周辺での記録はあり)
成虫は初夏と真夏、秋の3回発生。
越冬形態は幼虫。エノキの葉の裏にくっついて越冬する。


ルリタテハ
美しい瑠璃色の翅を持つ蝶。裏側は樹皮模様。
成虫は樹液食。幼虫はサルトリイバラ、ホトトギスなどの単子葉植物。
個体数は多くないが、少なくもない。
成虫越冬のため、冬季にも姿が見られることがある。


アカタテハ
成虫越冬するタテハチョウ。
食草はイラクサ科。玉川上水周辺では意外と見かける回数が少ない。

キタテハも生息しているものの、食草であるカナムグラの分布が局所的なため、見られる場所が限られている。


ヒオドシチョウ
こちらも成虫越冬するタテハチョウ。
食草はエノキなど。
玉川上水で見られることは少ない。




クロコノマチョウ
今のところ夏季には見かけたことがない。



アカボシゴマダラ
奄美大島のみに生息。移入種として関東周辺で分布を拡大中。
ゴマダラチョウやオオムラサキと似た生態だが、環境の変化にかなり強く、すでに個体数がかなり多くなっている。
春型は白化する(写真上)が、初夏にもほぼ夏型のような色の個体が見られることはある。


コミスジ

イチモンジチョウ
それぞれ、3本の筋、一本の筋が翅に見られるタテハチョウの仲間。
コミスジはかなり個体数が多い。姿の似たホシミスジ、ミスジチョウが生息している可能性もある。



ヒカゲチョウ

サトキマダラヒカゲ
どちらも幼虫はササ類を食草とし、成虫は樹液を好むジャノメチョウの仲間。個体数は多め。
生態はかなり似通っていますが、ヒカゲチョウは幼虫越冬、サトキマダラヒカゲは蛹越冬と、越冬態が異なっています。
そのため、春〜秋にかけ発生のピークがずれ続け、ヒカゲチョウの多いときにはサトキマダラヒカゲが少ない、サトキマダラヒカゲの多いときにはヒカゲチョウが少ない、ということが起こります。



ヒメウラナミジャノメ
ヒメジャノメ
どちらもジャノメチョウの仲間で、やや明るい所を好むと思われる。
福生〜羽村にかけてよく見かけるが、立川〜小平ではほとんど見かけたことがない。


テングチョウ
天狗のような鼻(下唇髭)が特徴。

アゲハチョウの仲間


アゲハチョウ(ナミアゲハ)
最も一般的なアゲハチョウ。食草はミカン科。
玉川上水林内にはわずかに実生のミカン類が生えているが、周辺の人家に植えられたミカンで育ち、飛んできている個体が多いと思っている。


キアゲハ


クロアゲハ


カラスアゲハ
まともな写真を撮りたいところ。


ジャコウアゲハ
ウマノスズクサを食草とする。


ナガサキアゲハ
黒いアゲハチョウの仲間は花に止まってくれないと同定が難しい。
ナガサキアゲハは尾状突起がないため、飛翔中にも簡単に分かることがある。


アオスジアゲハ
かわいらしい顔。クスノキの仲間が食草。かなりのスピードで飛翔する。


シジミチョウの仲間


ヤマトシジミ
最もよく見られるシジミチョウ。カタバミを食草とする。


ツバメシジミ
こちらも普通種だがヤマトシジミに比べたら個体数は少ない。食草はマメ科。


ウラナミシジミ
関東平地では秋によく見られる。食草はマメ科の野菜やクズなど。



ムラサキシジミ
成虫越冬するシジミチョウ。シイ・カシなどブナ科が食草。

 
ムラサキツバメ


ベニシジミ
明るい場所に多い。羽村周辺ではよく見られるが、立川〜小平の林内ではあまり見ない。とはいえ、少し開けた場所へ出たり、一歩市街地へ近づいたりすればかなり普通に見られる。

・ゼフィルス

アカシジミ
食草はブナ科。比較的都会的な環境でも見つかりやすいゼフィルス。
地面近くの草に止まっているところや、中〜低木の葉の裏で休んでいる姿を観察済み。


ウラナミアカシジミ
食草はブナ科。独特の模様が美しいゼフィルス。やや個体数が少ないか。


ミズイロオナガシジミ
食草はブナ科。他のゼフィルスと比べるとやや地味な感じもしますが、控えめな美しさを感じる。

セセリチョウの仲間

※調査不足。今年がんばって記録したいところ。


イチモンジセセリ
かなり多く見られるセセリチョウ。夏の終わりから秋にかけて見つかりやすい。


ダイミョウセセリ
春からよく見られるセセリチョウ。食草はヤマノイモ科。

キマダラセセリ
決して珍しい種ではないが、林内ではあまり見られない。

シロチョウの仲間

※やや調査不足。といっても、モンシロチョウスジグロシロチョウキタキチョウモンキチョウ、場所によってはツマキチョウ、それ以上はいないと思われる。
いずれの種も、林縁や隣接する畑地でよく見かける。


モンシロチョウ
林内ではあまり見られず、明るい林縁をふわふわと飛んでいる。

 
スジグロシロチョウ
モンシロチョウよりは薄暗い環境を好む。とはいっても、玉川上水沿いでは基本的に林縁で見かける蝶。

ゴマダラチョウ

 
玉川上水で見られる大好きな蝶、ゴマダラチョウです!


白黒のゴマまだら模様。
おしゃれなモノトーンの翅に、鮮やかなオレンジの目、黄色い口吻を持っています。

 」
成虫は樹液食。
親戚である国蝶オオムラサキと同様です。
ごく限られた種類の花を訪れることもあるようですが、記録が少なく、要調査。


他の虫とともに、樹液酒場へやってきます。
左はアカボシゴマダラ、下にはシロテンハナムグリ


この個体は春型なので、翅の裏側が全体的に白っぽい。


周りは移入種であるアカボシゴマダラだらけ。
寄生バチの寄生率がかなり高く、また、アカボシゴマダラに比べたら湿潤な環境を好みます。
アカボシゴマダラの強さと環境の悪化によって、ゴマダラチョウは減少傾向にあるようです。


羽化直後の夏型。
白黒柄がハッキリしています。

  

幼虫の頃のゴマダラチョウ、ゴマちゃん
エノキを食べて育ちます。
若い株で育つ個体は少ないので、なかなか観察できません。


 
葉っぱにくっついて越冬します。
体はだんだんと茶色になり...



ゴマちゃん、冬の姿。


エノキの葉の裏(稀に表)にくっついて越冬します。
関東各地の緑地で、どんどん見られなくなっているゴマダラチョウ。
ここではまだたくさんの幼虫が見られます。大切にしていきたいですね。


こんな風に、落ち葉のたまるエノキの根元で越冬します。

落ち葉が風で吹き飛んだり、掃き掃除をされたりすると生き残れません。

玉川上水でも、葉っぱが溜まりにくい場所が多いのが悩みどころ。

玉川上水のゼフィルス

シジミチョウの仲間のある一群は「ゼフィルス(zephyrus)」という美しい名で呼ばれています。
その名前と姿に魅了され、夢中で採集をした昆虫少年は多く、現在でも人気が高い蝶のグループです。

幼虫はコナラ・クヌギなどブナ科の樹木を食草とする種が大半。雑木林では食事に困らないはずです。
ただ、シジミチョウの幼虫がかなり小型であることもあってなかなか見つけられません。

玉川上水では何種類かのゼフィルスが見られるのですが、正確な数はまだ分かりません。 今のところ、アカシジミウラナミアカシジミミズイロオナガシジミの3種を記録しています。 
私の記録はほぼ立川市内のものですが、小平市内の雑木林エリアでも同様に生息していると思われます。



アカシジミ
食草はブナ科。比較的都会的な環境でも見つかりやすいゼフィルスだと思います。
地面近くの草に止まっているところや、中〜低木の葉の裏で休んでいる姿を観察済み。


ウラナミアカシジミ
食草はブナ科。独特の模様が美しいゼフィルス。やや個体数が少ないような気がします。


ミズイロオナガシジミ
食草はブナ科。他のゼフィルスと比べるとやや地味な感じもしますが、控えめな美しさを感じます。

アカシジミ

一年に一度、初夏に羽化するゼフィルスの一種、アカシジミに出会いました。 
 
美しい翅を持つシジミチョウです。

私個人としては初記録ですが、以前から玉川上水での記録はありました。


正面から顔を見てもかわいい!


他のゼフィルスもそうですが、見られる時期は限られているものの、その限られた時期には結構な数が見られます。

この日、玉川上水沿いのひとつの橋と橋の間だけで、少なくとも10個体以上に遭遇。発生のピークだったのでしょうね。

 
食草は他のゼフィルス数種と同じでブナ科。
コナラやクヌギの葉の裏で見つかってもおかしくないのですが、今のところ見つけることができていません。