アカボシゴマダラ


アカボシゴマダラゴマダラチョウに似たタテハチョウ科の蝶の仲間です。

準絶滅危惧種であり、生態系被害防止外来種(旧 要注意外来生物)でもあるというややこしい蝶。
本来国内では奄美大島周辺でのみ見られる蝶なのです。
そのあたりでは数が減りつつあり、その奄美亜種が準絶滅危惧種

しかしなぜか1998年頃より関東で見られるようになりました。
人為的に中国原産の種が持ち込まれた可能性が高いと言われています。(とりあえず2016年現在は。)

玉川上水でも数年前(2008年頃だろうか)より普通に見られる種となりました。

幼虫・さなぎ・成虫の姿形や食性もゴマダラチョウに似ていますが、「アカボシ」の名の通り赤い斑点が翅に見られることが大きな特徴。
口吻は鮮やかな黄色です。


春型は白みがかなり強く、別種のようにも見えます。


ゴマダラチョウと同じく、里山/雑木林環境が適しているようです。
成虫は樹液を好み、カナブン、カブトムシ、クワガタやスズメバチ、ヒカゲチョウと一緒に樹液を吸っている姿をよく見かけました。
9月に入ってからはルリタテハと一緒に樹液周辺でよく見かけています。


アカボシゴマダラの幼虫。
とてもかわいい!

タテハチョウの仲間で成虫の姿の似ている、ゴマダラチョウ、アカボシゴマダラ、オオムラサキ、コムラサキらのグループはみんなこんな雰囲気の幼虫です。
コムラサキの幼虫はヤナギ類が食草ですが、それ以外の3種はエノキ類を食べることも共通しています。

関東に移入してしまったアカボシゴマダラは当然のようにエノキを食べていますが、奄美亜種のアカボシゴマダラはクワノハエノキ(リュウキュウエノキ)を食べるとのこと。海岸近くにも生える沖縄版エノキといったところでしょうか。


アカボシゴマダラの幼虫に限ったことではないのですが、イモムシは脱皮した自分の皮を食べることがあります。
栄養があるのか、外敵から身を守るために自分がそこにいた証拠を消そうとしているのか。


顔部分の抜け殻。
脱いだ皮の体部分はやわらかいのですぐに形が崩れるのですが、顔部分はハッキリと形が残ります。




アカボシゴマダラのさなぎ。玉川上水では比較的よく見かけます。


地上から10数センチほどのササで蛹化していたので驚きました。
わりと低い位置でさなぎになることも多いようです。


羽化した後の抜け殻。
9月中旬の羽化。

おそらくこのくらいのタイミングで成虫になった個体が卵を産んで、次に生まれてくる個体は幼虫のまま越冬するのではないかと思います。(落ちたエノキの葉や樹の幹に張り付いて越冬します。)

 
たぶんアカボシゴマダラの卵。


さて、このアカボシゴマダラが増えたために在来ゴマダラチョウが減っている...という話も聞くのですが、なんともまだ分からない部分もあります。

たしかにエノキを食べるという部分では競合種なのですが。
このアカボシゴマダラが樹の幹でも越冬できるのに対して、ゴマダラチョウやオオムラサキは落ち葉に張り付く形でしか越冬できないと言われています。
つまりは、そのエノキの落ち葉をすべて掃いてしまうような管理の場合、ゴマダラチョウやオオムラサキは生き延びることができません。
さらに、比較的乾燥に強いアカボシゴマダラに比べると、オオムラサキたちは湿潤な林を好むようです。

玉川上水ではそもそも昔から、典型的な里山環境では普通に見られるオオムラサキがほとんど確認されていませんし、アカボシゴマダラが増える前からゴマダラチョウもそれほど多くなかったような感じもあります。
外来種に責任を押し付けたくもなりますが、落ち葉管理や林の環境のほうが大きな問題なのかもしれません。

玉川上水の水路周りにはかなり多くのエノキがありますが、人が普段から通行するために落ち葉を掃かないわけにはいかない部分がほとんどです。
安全柵内の場合は基本的に掃かないものの、急斜面になっている部分が多く、ふかふかに落ち葉が貯まっていくような環境はなかなか作れないのです。
難しい!