4月の花だより その4

玉川上水で見られる野草、山野草、雑草、樹木、花をご紹介!


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イボタノキのつぼみ。


古い木が多いため、強風や積雪により玉川上水の樹木はどんどん折れます。


マサキのつぼみ。


まだ残るシュンラン。


クマシデの雌花序。


ウツギの花。



ヤマブキの花。八重咲きのものは種ができません。


シロヤマブキの花。ヤマブキの園芸種というわけでもない別種。
ヤマブキの葉は互生。シロヤマブキの葉は対生。



カキドオシの花。



カマツカの花。


シュロの花。


エゴノキの花。


ケヤキの果実。


アミガサタケ。


ホソバオオアマナ。


キンランの花。


ガクウツギの花。



セリバヒエンソウの花。


ヤツデの新芽。


スズランの花。自生しているものではないはず。

ハリギリ

玉川上水の、立川市内にある雑木林エリアでハリギリが生長しています。

 
3月頃から伸びていくこの若木が気になっていたのですが、しばらくは何の樹木なのか見当が付きませんでした。

ハッキリとした葉が展開をはじめてからやっと判明。

ヤツデに似たこの葉っぱ。そして棘のある枝。
なんだかヤツデっぽいなと思いつつ、どう見ても常緑樹ではないので何だろうかと思っていたのですが。
ハリギリでした。


4月一週目時点。
この時点では全く分かりませんでした。
かなり特徴はあるので、ハリギリの若木を見たことがある方ならば簡単に分かったのかも知れませんが。
とにかく玉川上水内、この周辺では見かけない樹木なのです。
そのため「ハリギリかもしれない」という発想がなかなか出てこなかったわけです。

どこか遠くから運ばれてきた種子。
犯人は間違いなく野鳥。ヒヨドリかなあ。


この近くには、やはり周囲では見かけず、一本しか生えていない樹木としてリョウブアオハダがあります。


こちらはヤツデの葉。玉川上水のほぼどこでも見られます。
ヤツデとハリギリは同じウコギ科で、共通する特徴もいくつかあり。
陰樹。暗くてもがんがん育つので、放置するとどんどん増えます。


ちょうど今頃(4月)黒く熟すヤツデの実。それほど野鳥に人気があるわけではないみたいですが、ヒヨドリが食べているところは結構見かけます。


トゲが目立ちますね!

せっかく生えてきたハリギリ。これからもたくさん観察させていただきます。

キンランとギンラン

キンラン(金蘭)とギンラン(銀蘭)
どちらも雑木林の林床で育ち、美しい花をつけるラン科の植物です。


こちらはキンラン。
繊細で品があります。(当然人気もあり、毎年盗掘が心配されます。)

玉川上水の林床で見られる春の花の代表格。
というわけで、私の制作した玉川上水の自然保護を考える会webサイトでも、トップページにキンランの写真を掲載しています。

あらためて考えてみると、「キンランの背景に水路」という風景はちょっと珍しいものかもしれません。



本来は、雑木林の中では当たり前のように見られた種のはず。
この景色を大切にしたいものです。

菌根菌との共生関係にあり、どこかへ移植してもうまく育たない植物です。
周囲の環境も含めて、適切な管理が必要。


遠くから見ると黄色い塊のような形に見えてしまうこの花ですが、近づいて見ればランの花らしい形であることが分かります。



こちらはギンラン。キンランよりも清楚なイメージ。

  
キンランよりも、さらに開かないタイプの花です。
こちらも遠くから見ると、ランの仲間だと分かりにくい。



玉川上水で見られる他のランの仲間としては、シュンラン(春蘭)があります。
これも大好きな植物。
他のランの仲間の多くは、萼弁も鮮やかな色をしているのに対して、シュンランの萼弁は葉に近い色になっています。
そのため、構造的には典型的なランの花の形をしているのにどこまでが花なのか分かりにくく、不思議な形の花という印象を受けやすくなっています。


シラン(紫蘭)の花。
こちらは花びらも萼も同色のため、ランの仲間だと分かりやすい。
玉川上水でもあちこちで見られるこのシランですが、おそらくは昔から自生していたものではなく、栽培していたものが広がって増えているのではないかと思っています。

APG体系とは

APG体系

植物の勉強をしていく上で、なかなかやっかいな問題です。

基本的に外見的な特徴により分類した、従来の体系に対して、APG体系はDNA解析にもとづいたものになっています

これまではケヤキ、ムクノキ、エノキはまとめてニレ科だったのですが、APG体系ではケヤキのみがニレ科。エノキ、ムクノキはアサ科となりました。
ムクノキ、エノキがニレ科じゃないなんて違和感あり

もちろん、以前の体系が無かったことにはなったわけではありません。
新しく発売される図鑑でも、APG体系による分類ではない場合がけっこうあります。

私が気に入っているポケット図鑑、『都市の樹木433』(岩崎哲也 著)もAPG体系ではなく、クロンキスト体系を採用しています。
その理由については、
生物の"種"は、私たち人間が勝手に区別したものであり、古くから見た目による形態分類が行われてきました。人間が目で見て、種類の違いが分かれば十分だったのです。しかし近年、生物分類を専門とする研究者にとっては、DNAの一部を解説することによって遺伝子分類を行うほうが真実に近いこととされています。形態分類は誤りであるといわれることもあります。しかし、私たちに都市居住者にとって、どちらが正しいということではありません。
としています。

そもそも、植物の専門的な研究家ではない、私たち一般人が図鑑等によって分類を学ぶ目的はなんだろうかとか、そういうことも考えてしまいますね。

個人的には「基本的には古い形態分類で覚えていく。遺伝子分類も補足的な情報として覚えていく」という方針で勉強していくつもりです。
普通の自然観察会の中では、エノキはニレ科として紹介しても問題ないのではないかと思っています。