エリアガイド『小金井から終点四谷まで』
自然に関する情報を中心に。
今回は、小金井から終点四谷まで。
小金井から終点四谷までを紹介していきます。現在では、杉並区内、富士見ヶ丘駅付近より下流の水路は一部を除き暗渠となっています。緑地に包まれるような形となっている井の頭公園内を除き、「生物多様性」という観点からはやや厳しい環境の多いエリアかもしれません。
小金井公園周辺
<小金井市内の遊歩道>
江戸時代、玉川上水沿いに吉野山の桜など全国から取り寄せた山桜が植えられた場所です。いつか江戸・東京随一の桜の名所となり、国の名勝にも指定されました。かつては管理が徹底されていて、桜と低い草本の他にはほぼ植物が見られない状態でした。昭和30年代の写真を見ても、その様子が確認できます。しかし、昭和46年に小平監視所より下流の通水が停止してからは荒廃が進み、法面を中心にケヤキが繁茂するようになり、現在では雑木林に近い環境となっています。生き物たちにとっては以前よりも棲みやすい環境になったかもしれませんが、南北両側が車通りの多い車道になってしまったことで、緑地としては厳しい状態にあります。花見をするのにも、自然観察を行うのにも、今では小金井公園内の方が適しているかもしれません。ただ、放置されたことでの植生の移り変わりや、車通りの多い緑地でどう保全を行っていくべきかなどを考えてもらうのには良い場所ではないでしょうか。
<小金井公園内のソメイヨシノ>
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井の頭公園周辺
吉祥寺駅の南西で、玉川上水は井の頭公園内を通過します。このあたりを流れる玉川上水の周囲では野鳥を中心にかなりたくさんの生き物が見られるのですが、今回は解説を省略します。ここで見られる豊富な動植物は「玉川上水の自然」というより「井の頭公園の自然」として紹介するのがふさわしいのではないかと思います。ところで、小金井から井の頭公園までの間にも独歩の森(境山野緑地)、野鳥の森公園などいくつかの緑地が隣接しています。ただ、規模が小さかったり、手入れが行き届いていなかったりと、「惜しい緑地」が多いと感じます。髙野 丈『井の頭公園いきもの図鑑』
関連記事→野鳥の森公園
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玉川上水公園
さらに下流へ進むと、暗渠となった玉川上水の地上部に、玉川上水第二公園、玉川上水第三公園など複数の公園が続いています。残念ながらあまり自然度の高い環境ではないのですが、市街地の中でのちょっとした観察会はできる場所だと思います。玉川上水は羽村から終点四谷まで、限られた高低差の中でなんとか水を流すために、また右岸左岸両側から分水を引けるように、なるべく標高の高いところを選んで水路が引かれています。このあたりはそれがかなり分かりやすくなっているので、「地形の観察」も併せて楽しんでほしいエリアです。
内藤新宿分水散歩道
<内藤新宿分水散歩道>
終点近く、玉川上水の流れに沿って新宿御苑の北側に作られた散策路です。玉川上水の流れそのものではないのですが、玉川上水をイメージして作られた水路となっていて、その周囲でたくさんの野草が見られます。植栽によるものではあるのですが、シュンラン、ニリンソウ、ホタルブクロ、ノカンゾウ、センリョウ、ホトトギス、ノコンギク、キキョウなどなど、まさに「武蔵野の山野草」というイメージのものが数多く植えられています。武蔵野の植生について学ぶ、ミニ観察会には最適な場所ではないでしょうか。道中に設置されたパネルで、玉川上水について学ぶこともできます。ちなみに、新宿御苑内の日本庭園エリアにある玉藻池も、かつては玉川上水の余水が利用されていたようです。
<水道碑記(すいどういしぶみのき)>
最後のまとめとして。羽村から終点四谷までの水路は全長約43km。ぜひ一度はその全てを歩いてみてほしいと思っています。かなり無理をすると1日で歩くこともできるのですが、2、3日に分けて環境の変化を観察しながら歩くのがオススメです。玉川上水は「多摩川と都心を結ぶグリーンベルト」というような表現をされることもあるのですが、実際に歩いていみると、残念ながら多くの場所で途切れてしまっていることが分かります。これ以上途切れる箇所を増やさないためにも、周辺住民と交流しながら、様々な形で活動を続けていきたいと思っています。