エリアガイド『立川から小平まで』

玉川上水をエリアごとに紹介します!
自然に関する情報を中心に。

今回は、立川から小平まで。


 「玉川上水の自然」を考えるときに、かなり重要となってくるのが立川市内・小平市内の雑木林環境となっているエリアです。どちらもかつては水源が乏しかった土地であり、江戸時代に玉川上水が開削された後に開発されていった場所です。雑木林環境も、その時代から生活のために作られたものであることが明確になっているため、歴史の流れとともに雑木林の仕組みや役割を説明しやすいエリアと言えると思います。さて、自然観察会や散策におすすめの集合場所は2ヶ所あります。

玉川上水駅周辺


<玉川上水駅南口付近>

 立川市内、玉川上水駅は西武拝島線と多摩都市モノレールの接続駅です。駅の南口を出て西へ数メートル歩けば、すぐに雑木林。このあたりは、初夏にゲンジボタルの幻想的な光を楽しめるエリアでもあります。駅を出発してから橋を2つ越えるまで、南北両側に車道がない貴重な区間となっており、歩行者も多くないため、自然の中の音をじっくり聞く観察会には最適です。また、遊歩道にはある程度幅があり、歩道の間に残る藪では多様なつる植物が観察できます。

<遊歩道沿い ササを覆うつる植物>
 そのまま2~3km進んでいくと、桜並木が中心のエリアになります。そこには生き物の気配が少なく、あまり観察会向きの場所ではないのですが、雑木林側から歩いてきた場合「なぜこちらには生き物の気配が少ないのか」と比較して考えてもらうのには良い場所かもしれません。また、雑木林エリアと比べて緑地として完全に劣っているわけではなく、例えば日当たりの良い林床にかなり多くのアマナが見られたりします。


<見影橋付近の桜並木>

・立川市内 玉川上水の簡易地図


A 雑木林エリア  天王橋 以西
 クヌギ、ケヤキの大木が多い雑木林環境です。ある程度は緑地の幅があるものの、積極的な保全活動は行われておらず、動植物のバリエーションに乏しい単調な環境となっています。

B 桜並木エリア  天王橋〜金比羅橋間
 ソメイヨシノやサトザクラが中心の明るく整備された水路です。生き物の住みやすい環境ではありませんが、日当たりの良い法面にアマナ等の野草が数多く開花します。「源五右衛門分水」も引かれており、砂川の文化中心地。歴史的にはとても重要なエリアです。

C 雑木林エリア  金比羅橋〜清願院橋(玉川上水駅)間
 自然という観点では立川市内で最も重要なのがステッチ周辺の雑木林環境です。このあたりだけでも50種近い野鳥を記録しています。野草や昆虫の種類数もかなり多く、大切にしていきたい場所です。玉川上水全体の中で、特にエノキの成木、実生が多いエリアでもあります。

D すっきりとした林のエリア  清願院橋(玉川上水駅)〜小平監視所間
 林の幅が狭く、北側に車道もあるため乾燥しており、動植物の生育にあまり適さない環境です。明るい水路にはカワセミやカワウの他、冬季にマガモが飛来することもあります。



鷹の台駅周辺

 小平市内の最重要ポイントです。駅から南へ歩けば1分ほどで玉川上水へ到着。小平中央公園が隣接し、となりの広い雑木林(通称どんぐり林)もあわせて、イベントやワークショップにも最適な場所です。玉川上水の水路をはさんで、北側、南側に遊歩道があります。いくつかの学校の通学路にもなっている北側は、夏でも涼しさを感じる気持ちの良い散策路となっており、湿潤な林内環境を好む動植物がよく見られます。日当たりがよく車道にも面している南側は乾燥しがちな環境ですが、樹液の出るコナラ・クヌギが多く見つかります。かなりの長さとなっている南向きの林縁は、玉川上水ならではの個性だと思っています。少し東へ進むと、北側に津田塾大学が隣接しています。通常は入ることができないのですが、キャンパス内にスダジイを中心とした状態の良い常緑樹林があり、玉川上水にとっても重要な緑地となっています。  
<小平市内の遊歩道>



 さて、立川市内と小平市を比較すると、緑地に厚みのある小平市内にしか見られない動植物があったり、時にはその逆もあったりしますが、概ね共通していて、その多くはいわゆる「武蔵野の雑木林」で見られる動植物です。樹木はコナラ・クヌギの他、エノキ、ムクノキ、ケヤキにエゴノキやイヌシデが大半を占めており、それらを中心とした生態系が築かれています。野草ではカタクリ、シュンラン、ニリンソウ、キンラン、ギンラン、マヤラン、ヤマユリ、ノカンゾウ、ホトトギス、リンドウなどの他、秋の七種のほとんども見られます。

<シュンランの花>

 これらの野草のいくつかは絶滅危惧種に指定されているものの、まだまだ「あるところでは普通に見られる」植物とも言えると思います。玉川上水には、それが生息しているだけで開発を止めるための大きな説得力となるような希少動物、希少植物は基本的に見られません。ただ、多くの市民が普段から当たり前のように通勤、通学、散歩で利用する緑道の脇に、こういった花が当然のように咲いている環境が今どれだけ現存しているでしょうか。「希少な自然を守る自然保護」とは違う、玉川上水のような場所での「普通の自然を守る自然保護」も、これからの時代に重要になってくるのではないかと考えています。