玉川上水の野草


 季節ごとに玉川上水を散策すると、多種多様な野草に出会います。特別に希少な種類が見つかるわけではないのですが、数種類のランの仲間やアマナなど環境の変化とともに生息地が減少しつつある典型的な「武蔵野の野草」が多く自生しています。通学路や散歩道として日常的に使われている緑道でそういった野草が見られる環境は、今となってはかなり貴重なものではないでしょうか。



ササバギンラン。玉川上水上流域〜中流域にかけて、林の手入れをしている場所ではときどき見られる。 


フデリンドウ。リンドウの仲間であり、春に花をつける。日が出ている間しか花を開かないので、見逃してしまうことも多い。



ヤマユリ。夏に花を咲かせる、かなり大型のユリ。香りがとても強い。咲き始めると散歩道に良い香りが漂う。


ノカンゾウ。夏に鮮やかな花をつけるユリ科の植物。新芽は食用にもなる。八重咲きのヤブカンゾウもよく見られる。

スプリング・ エフェメラル

 「春の妖精」や「春の儚い命」などと訳される「スプリング・エフェメラル」。初春に美しい花をつけるが、花期を過ぎるとあっという間に姿を消し、地下茎の状態で長い時間を過ごすためにそう呼ばれる。玉川上水ではニリンソウやアナマなどが見られる。

秋の七種

 山上憶良の和歌に「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花また藤袴 朝貌の花」と秋に見られる野草を詠んだものがある。特別華やかな雰囲気の花ばかりではないが、秋らしさを感じられる絶妙な七種となっている。その多くが玉川上水で見られるが、自生していたものはすでに滅びていて植栽されたものの場合もある。


キキョウ(朝貌の花)。諸説あるが、朝貌の花はキキョウの花だとされることが多い。自生地はかなり少なくなってきている。


ススキ(尾花)。誰もが知っている秋の風物詩。動物の尾のような花穂をつけるので尾花と呼ばれる。主に林縁で見られ、夏頃から花が咲く。


オミナエシ(女郎花)。玉川上水の林内で見られることはあまりなく、どちらかといえば日当たりのいい林縁で見つかる。


ヤマハギ(萩の花)。万葉の時代には非常に人気があった野草。玉川上水で見られる場所はそれほど多くはない。小さな蝶形花をたくさんつける。

玉川上水の紅葉2017

さて、紅葉のピークを過ぎ、ほとんど落葉樹の葉は落ちた年の瀬の玉川上水。

振り返ってみると、今年の紅葉はどんなもんだったでしょうか。


12月2日の様子。
カラフルです!


落ち葉もカラフル。
トウカエデの葉が目立つ!

12月初旬が紅葉・黄葉のピークでした。
冬になり、異常な寒さを感じる日も多かった今年ですが、紅葉のペースは平年並み。


コナラの実生は真っ赤に紅葉します。不思議!
しっかり育った株はもうちょっとオレンジ系の色になります。


コナラ、クヌギはオレンジ。エノキやムクノキは黄色が目立ちます。
カエデ類があれば、部分的に真っ赤になったりも。

雑木林の紅葉は、黄緑、黄色、オレンジ、赤が入り混じったカラフルなものなのです!


遠くからでも目立つ黄色なエノキ!


とはいえ、ゴマダラチョウ幼虫がくっつくエノキの落ち葉は茶色。


「秋といえば何色でしょう?」と質問すると、「茶色やだいだい」といった答えが返ってきます。
たしかに、紅葉の早い桜の仲間などは秋に茶色になりますが、関東の平地で多くの樹木は12月初旬が紅葉のピーク!

イメージと実際にはなかなかのギャップがあります。おもしろい。

ケヤキの種子散布


11月に入りましたが、玉川上水林内はまだまだ緑色。
ところが...

 
日当たりの良い場所の樹木はばっちり紅葉しています。
こちらは、玉川上水駅前のケヤキ

 
美しい鮮やかなオレンジ色!

サクラの仲間は全体的に紅葉が早いのですが、ケヤキの場合、日当たり次第で極端に紅葉具合が変わるイメージ。
街路樹として植えられているケヤキはかなり早くに紅葉するものが多いですね。


さて、本日11月9日はなかなか強風が吹いた一日でした。
そんな日に、ひらひらと空を舞っていたこれ。


ケヤキの小枝です!
いくつかの葉っぱがついた枝。

普通、落葉樹が冬に落葉する場合、葉っぱだけが落ちます。
このケヤキは枝ごと折れてしまったのでしょうか?


実はこれ、ケヤキが種子散布するための戦略なのです!

カエデの仲間など、種に翼がついていて、ひらひらと舞い落ちる樹木もあるのですが、ケヤキにはそんな翼はありません。
その代わりに、小さな葉がついた枝をまるごと落とすのです。


よく見ると、その小枝ごとに数個の果実がついています。

小枝ごと切り離すことで、しっかり風を受け、ひらひらと飛んでいく。
そうすることで、種を遠くまで散布しているんですね!

今日のような強風では、かなりの距離を飛んでいました。