エリアガイド『玉川上水上流部』

玉川上水をエリアごとに紹介します!
自然に関する情報を中心に。

まずは、上流部(羽村市・福生市・昭島市)。

羽村取水堰周辺


▲羽村取水堰

 最寄りは羽村駅。駅から十数分ほど歩くと羽村取水堰にたどり着きます。ここは、多摩川より玉川上水のための水を取り入れる取水口。玉川上水の出発点です。4月にはたくさんのソメイヨシノが楽しめる桜の名所でもあります。2016年にはこの近辺にイノシシが出没し、ニュースとなりました。多摩川より東側、羽村駅近くは住宅街になっていますが、多摩川より西側、青梅市に近づけば比較的豊かな自然が広がっています。


▲羽村取水堰周辺での『さくらまつり』


▲羽村陣屋跡の陣屋門

 自然を楽しみたい場合、玉川上水方面へ進む以外にも、多摩川の水辺を散策したり、橋を渡って郷土博物館方面に進みハイキングコースを散策したりと、季節や状況に応じて多くの選択肢があることもこのあたりの魅力です。玉川上水沿いに歩いて行った場合しばらくは桜並木が続くため、多様な動植物が見られる環境とは言い難いのですが、下流ではあまり見られない、明るく開けた場所を好む動植物が見られることがあります。木に止まっているサギ類も観察しやすいスポットです。


▲樹上のアオサギ


加美上水公園周辺

 取水堰より30分ほど下流に向かって歩くと、「加美上水公園」にたどり着きます。公園内は、コナラ、クヌギやイヌシデを中心とした典型的な雑木林環境となっています。最近は林床の手入れが進み、キンランやギンランが見られるようになっている他、時期によっては腐生ランも観察できます。東側は玉川上水と隣接、西側は多摩川とつながっていて、環境の違いによる植物相・生物相の変化を観察するのに最適な場所となっています。

▲福生加美上水公園内の林

日本野鳥の会の創立者である中西悟堂の「野鳥村」構想の地でもあり、大切にしていきたい場所です。2016年7月に、公園に隣接する古民家を改装したビジターセンターもオープンしました。

▲中西悟堂「野鳥村」構想の地 プレート



▲ビジターセンター

・みずくらいど公園周辺

 拝島駅付近、玉川上水の開削跡も残る福生市内の公園です。公園内には、バードウォッチングに使える覗き窓付きの壁も設置されています。やはりキンランが見られる程度には手入れが行われているのですが、普段は人の気配が少なく、自然観察会のようなイベントはそれほど積極的に行われていません。今後に期待したい緑地です。公園内には放置されている朽ち木が多く、かなり多くのきのこが見つかります。じっくり探したら面白い菌類が見つかることもあるかもしれません。



 さて、玉川上水沿いの緑地のほとんどは落葉樹を中心とした林になっていて、特に冬は野鳥観察に最適なスポットとなります。ヒヨドリ、ムクドリ、シジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、エナガ、オナガといった基本的な野鳥はもちろん、枯木が点在する長い緑道はキツツキ類の住みやすい環境となっています。水路を覗けばコサギ、ダイサギ、アオサギなどのサギ類やカワウの他、カルガモ(冬にはマガモも)、ちょっとした足場があればハクセキレイやキセキレイも飛んで来ます。

▲上流部で見かけることの多いマガモ

 観察会中に狙って見ることは難しいかもしれませんが、カワセミがやってくる頻度も低くはありません。冬鳥として見られるのはジョウビタキ、ルリビタキ、シロハラ、ツグミ、イカル、シメなど。カッコウの仲間や猛禽類はエリアによって見られる種類が変わります。その違いを調査・観察することも面白いと思います。

▲福生市内の玉川上水で見かけたカワセミ

 私(成瀬)は立川や小平エリアの玉川上水を中心に簡易な動植物調査や観察会、講演会等を続けていますが、可能ならば各流域で共同調査・情報交換が行われるような仕組みをいつか整えたいと思っています。上流部での活動があれば、ぜひ教えてください。