松浦 節『約束の奔流―小説・玉川上水秘話』を読んで

約束の奔流―小説・玉川上水秘話

とても貴重な小説だと思いました。

そもそも小説の題材として取り上げられることの少ない玉川上水。
それでもあえて玉川上水を扱うとしたら、普通は玉川兄弟を主役にし、困難に立ち向かっていく実直な人物として描くことを選びたくなるものだと思います。


しかし、この『約束の奔流―小説・玉川上水秘話』では玉川兄弟はなんと脇役

工事に携わって玉川上水開削を影で支えた石工・大工たちがこの物語の主役
玉川兄弟、特に兄の庄右衛門は、悪人とまではいきませんが、下で働く人間への気遣いができているとは言い難い、小物臭のするキャラクターに仕上がっています。

そもそも資料の少ない玉川兄弟。こんな視点があってもおもしろい!

玉川上水完成後、玉川姓と水元役も与えられた庄右衛門・清右衛門兄弟ですが、3代目になると仕事の不正により解任されてしまいます。
この小説に登場する玉川兄弟なら、3代目の不正も納得できてしまうかも...


松浦 節『約束の奔流―小説・玉川上水秘話』
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新堀用水の胎内堀

胎内堀(たいないぼり)は、ほっこぬきたぬき堀などとも言われます。
トンネル型の水路のことです。

玉川上水から分かれる、新堀用水で今でも見ることができます。


玉川上水駅から東へ。途中小平監視所を通過します。
そのあたりから北側へ分岐しているのが新堀用水です。
(しばらくは暗渠のため見えません。)

新堀用水が掘られたのは1870年。
江戸時代ではなく、明治に入ってからのことです。
玉川上水北側にいくつもあった分水口を、この新堀用水に統合しました。
同じ時期に南側の分水口も砂川用水に統合されています。

しばらく東へ進むと見えてくる柵。そして空いている穴。


この穴をのぞいてみると…



確かに水が流れています!
このあたり、玉川上水本流に流れる水は、多摩川上流水再生センターで処理された下水の処理水なんですが、こちらの水路に流れる水は多摩川の水そのまま
小平監視所からそのままこちらへ流されているそうです。


2つめの穴。


3つめの穴。

このあたりの赤土は、水分を含むと粘り気が出てくるので、掘ったまま崩れる落ちることはないとのこと。
そのため、トンネル型の水路が成り立つのですね。
とはいえ、掘った時にたまる土を出す必要があります。
その、土を出すための穴がこれというわけですね。



4つめの穴。

柵がいつ頃作られたのかは分かりませんが、柵のなかった頃はかなり危険だったはずです。
落ちてしまったらそう簡単には抜けだせません。



トンネルの出口です。


ここからは、開いた水路として、玉川上水の脇を流れていきます。

そのまま進み、小川橋まで来たところにあるのがこの石橋供養塔。


「武州多摩郡小川村 世話人 小川・砂川 村中」とあります。

立川市に現れたヤギ

立川駅から少し北へ歩いたところに、ヤギの群れが現れ、(小さく)話題になっていました。

初夏くらいから見かけたような。

国有地だった空き地を立飛ホールディングスが落札し、ヤギ放し飼いによる除草を行っていたそうです。

(撮影 2015年11月)




もうかなり前から立川駅の乗降客数は吉祥寺駅を追い抜いているそうです。
駅ビルの開発が進み、多摩モノレール沿いにIKEAもできて、ららぽーともオープンします。
この空き地にもいつか商業施設が建つのだとか。


柴崎分水を歩く

11月の終わりに、柴崎分水を歩いてたどる機会がありました。



駅で言えば西武立川近く。
松中橋付近に2つの分水口があります。
左が砂川分水。右が今回たどっていった柴崎分水の入り口です。
もちろん現在も使われています。


立川市と昭島市の境近くを分水が下っていきます。
街中にも残る昔ながらの分水風景。
玉川上水本流と違い、水量は昔とそれほど変わっていないので、玉川上水以上に昔から変わらない風景とも言えます。

よく探すと、小魚が泳ぎ、カワニナも生息しています。


柴崎分水は途中、昭和記念公園の中を通っていきます。
イチョウの紅葉が見頃、いや、少し見頃過ぎでした。

暗渠になっている部分も多いものの、現在でも変わらず多摩川の水が長い距離を流れていることに驚きました。