「自然保護」は古いのか?「C型自然保護」とは
「自然保護」のイメージと誤解
「自然は手付かずのまま、人間が関わらないことが一番」というイメージは、今でも根強く浸透しているのではないかと思います。たしかに、放置することが良い結果になる環境もあるのですが、人間の生活と関わりの深い「雑木林」、「里山」については、良い状態に維持するためには、手入れが不可欠です。
日本自然保護協会『自然の見方が変わる本』
「自然保護」は古いのか?
80年代後半から90年代くらいでしょうか。たくさんの環境問題が話題になり、それまで興味を持っていなかったたくさんの人も「自然保護」に注目するようになりました。
しかしその勢いの中、盲目的で極端な「自然保護活動」も生まれてしまい、その反動で「自然保護」にネガティブなイメージも持たれてしまったのではないかと思っています。
その頃に広がったイメージで、「自然保護活動」=「木を一本も切らせない活動」のように思われて、そのイメージのまま止まってしまっている部分もある気がします。
タイムリーな話題としては、ごく最近の玉川上水に関する意見交換会の中でも「自然保護自然保護と言いますが、自然保護というのはもう古い」というような発言もありました。
現在の「自然保護」はどのような意味を持っているか
NACS-J 日本自然保護協会の自然観察指導員の講習では、3タイプの自然保護があると教わります。1.P型の自然保護(Preservation=保存、Protection=保護)
2.C型の自然保護(Conservation=保全)
3.R型の自然保護(Restration=復元、Rehabilitation/Recovery=回復)
原生自然を推移に任せ、外からの圧力から守るようなタイプがP型の自然保護。
人が手入れをし、持続可能な管理をしていくタイプはC型の自然保護。
失われてしまった自然環境を取り戻していくタイプはR型の自然保護。
現在の主流はC型の自然保護です。
世界的にも、時代の流れとともにP型からC型自然保護への転換が行われていったようです。
日本自然"保護"協会の英語名も、The Nature Conservation Society of Japanであり、保全の意味のConservationが使われています。
"保護"と聞いてパッと頭に浮かぶのはProtectionですが。
少なくとも日本自然保護協会は、上記P型、C型、R型、3種すべてを含む広義の自然保護を表す場合はConservationを「自然保護」と訳す、としています。
結論
保存や保護しか行わない「自然保護」は確かに古いとも言えるのかもしれません。「環境保全」という言葉を使う場面が増えてきています。しかし、文脈によってはこのまま「自然保護」という言葉を使い続けても問題ないのではないでしょうか。ただ、「自然保護」に「保全」の意味も内包されていて、決して「木は絶対切らない、手付かずの自然を大事にする」ような活動だけではないことを伝えていく必要はありそうです。
『ビオトープ管理士資格試験公式テキスト』